ピアノの「応用的な技術の習得」と「音楽性の深化」-4

音楽

ここでは、さらに演奏の質を高め、表現力を豊かにするための練習ステップを3つご紹介します。


ステップ1:脱・親指くぐり!「ポジション移動の習得」

音階やアルペジオをより速く、より滑らかに演奏するためには、親指をくぐらせるというより、手のポジション全体を移動させるという意識に切り替える必要があります。これは特に上級者を目指す上で非常に重要です。

  • 目的: 指の運動ではなく、腕と手首を使った「手の位置の滑らかなスライド」を習得する。
  • 練習方法:
    1. 脱力(だつりょく)を意識する: 指一本一本の力ではなく、腕全体の重みを鍵盤に乗せるイメージで弾きます。
    2. 手の形を維持する: 親指をくぐらせるときに、手の形が崩れてしまうのを防ぎます。親指をくぐらせるのではなく、手のポジションが横にスライドして次の音の位置へ移行するように意識しましょう。
    3. レガート(滑らかさ)の追求: 次の音を弾く直前まで前の音を離さないようにし、「前の音に重ねるように次の音を弾く」練習をすることで、音が途切れないレガート奏法を磨きます。

ステップ2:楽曲の「構造理解」と「和声分析」

技術的な練習だけでなく、演奏する曲そのものへの理解を深めることで、表現に説得力が増します。

  • 目的: 作曲家が意図した音楽的な構造や感情を読み取り、演奏に反映させる。
  • 練習方法:
    1. 楽譜に注釈を入れる: 楽譜を単なる音符の羅列ではなく、物語や設計図として捉えます。
    2. 和音(コード)を把握する: 楽譜の縦の響き(和音)が、長調(明るい)か短調(暗い)か、どの和音からどの和音へ動いているかを分析します。和声の動きが分かると、表現にメリハリをつけやすくなります。
    3. アーティキュレーションを徹底する: スラー(滑らかに)、スタッカート(短く切る)、アクセント(強調)などの記号を楽譜に書き込み、それを忠実に再現することで、曲のキャラクターが明確になります。

ステップ3:客観的な自己評価(録音・録画)

上級者になればなるほど、自分の演奏を客観的に聴く能力が重要になります。

  • 目的: 自分がイメージしている演奏と、実際に聴衆に届いている演奏のズレを発見し、改善点を見つける。
  • 練習方法:
    1. 定期的に録音・録画する: スマートフォンなどで演奏全体を録音し、すぐに聴き返します。
    2. 聴き手の視点で評価する: リズムが乱れていないか、音の粒が揃っているか、強弱(ダイナミクス)が効果的に使えているかなど、演奏者ではない第三者の視点で評価シートを作りチェックします。
    3. 改善点を明確にする: 「次は、この小節の左手の音量を上げよう」「次の録音では、テンポを崩さないことに集中しよう」など、具体的な目標を設定して練習に取り組みましょう。

これらのステップは、技術の向上だけでなく、音楽家としての感性や思考力を育むことにつながります。特にステップ2の「構造理解」は、表現の幅を大きく広げてくれます。

コメント