ピアノを弾き始める上で、多くの人が最初につまずくのが「楽譜を読むこと」かもしれません。「たくさんの点と線が並んでいて、暗号みたい…」と感じる方もいるでしょう。
しかし、ご安心ください。楽譜はいくつかのルールを知るだけで、誰でも読めるようになります。ここでは、ピアノ演奏に必要な楽譜の基礎知識と、具体的な読み方のステップを解説します。
1. 楽譜の基本構成を理解する
ピアノの楽譜は、主に以下の3つの要素で構成されています。
① 5線(五線譜)
- 5本の平行線と、その間の4つの空間(間)でできています。音符は線の上に乗ったり、間の空間に入ったりして、音の高さを表します。
② 音部記号(ト音記号とヘ音記号)
ピアノの楽譜は通常、上下2段に分かれており、それぞれに異なる音部記号がついています。
| 記号 | 名称 | 担当する手 | 特徴 |
| 𝄞 | ト音記号 | 主に右手 | 高い音域を担当します。ト音記号の巻き始めが「ト」(G)の音の位置を示しています。 |
| 𝄢 | ヘ音記号 | 主に左手 | 低い音域を担当します。ヘ音記号の点々の間にある線が「ヘ」(F)の音の位置を示しています。 |
③ 拍子記号
楽譜の冒頭にある分数のような数字で、曲のリズムの基本を示します。
- 上の数字(分子): 1小節の中に「いくつ」音符が入るかを示します。
- 下の数字(分母): 「何分音符」を1拍とするかを示します。(例:4は四分音符)
- 例:$\frac{4}{4}$(四分の四拍子)は、1小節に四分音符が4つ分入るという意味です。
2. 鍵盤と音符の位置を一致させる
楽譜を読む上で最も重要なのは、「ド」の位置を基準に覚えることです。
ステップ A:中央の「ド」を見つける
- ピアノの鍵盤のほぼ中央にある「ド」の音を**「中央ハ(C)」**と呼びます。ここが、ト音記号とヘ音記号のちょうど境目になります。
- 楽譜では、ト音記号の五線の下に**「短い加線(かせん)」**を引いた位置にあるのが「中央ハ」です。
ステップ B:ト音記号の音符を覚える
基準の「中央ハ」から上に数えて覚えます。
| 音符の位置 | 音名(ドレミ) |
| 加線(中央ハ) | ド(C) |
| 五線の下の「間」 | レ(D) |
| 五線の一番下の「線」 | ミ(E) |
| 一番下の「間」 | ファ(F) |
| その次の「線」 | ソ(G) |
💡 【コツ】 ト音記号は、**線上の音(ミ・ソ・シ・レ・ファ)**を語呂合わせで覚える方法もあります。
ステップ C:ヘ音記号の音符を覚える
基準の「中央ハ」から下に数えて覚えます。
| 音符の位置 | 音名(ドレミ) |
| 加線(中央ハ) | ド(C) |
| 五線の一番上の「間」 | シ(B) |
| 五線の一番上の「線」 | ラ(A) |
| その下の「間」 | ソ(G) |
| ヘ音記号の「点々の間にある線」 | ファ(F) |
💡 【コツ】 読譜の最初は、全ての音を暗記しようとせず、「ド」や「ファ」などの基準の音から、数えて読んでいく練習をしましょう。
3. 音の長さ(リズム)を理解する
音符の見た目で、その音をどれくらいの長さ弾くかが決まります。
| 音符の名称 | 見た目 | 長さ(拍数) | 特徴 |
| 全音符 | 〇(白抜き) | 4拍分 | 4拍伸ばす($\frac{4}{4}$拍子の場合) |
| 二分音符 | 〇(白抜き、棒付き) | 2拍分 | 2拍伸ばす |
| 四分音符 | ⚫︎(塗りつぶし、棒付き) | 1拍分 | 1拍伸ばす |
| 八分音符 | ⚫︎(塗りつぶし、旗付き) | 半拍分 | 四分音符の半分の長さ |
💡 【拍子の練習】 メトロノームを使い、四分音符が「タン」、二分音符が「ターアン」というように、声に出してリズムを数えながら練習すると、リズム感が身につきます。
4. 読譜力を鍛える練習法
楽譜をスラスラ読めるようになるには、反復練習が必要です。
- ゆっくり声に出して読む: 楽譜を見ながら、ピアノを弾かずに「ドレミファ」と音名を声に出して読んでみましょう。
- 指番号を書き込む: 最初のうちは、どの指で弾くかを示す指番号(親指が1、小指が5)を楽譜に書き込んでおくとスムーズです。
- 少し先の音符を見る: 今弾いている音符だけでなく、常に数拍先の音符を意識して見るように心がけましょう。
この基本的な知識とステップを実践することで、楽譜はただの記号ではなく、音楽を奏でるための地図に変わります。焦らず、少しずつ楽しみながら読譜力を身につけていきましょう!

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