「(a+b)5 の展開式って、いちいち括弧を外して計算しなきゃいけないの?」
「二項定理の公式に出てくる nCr って、なんで組み合わせの記号が使われてるの?」
展開の公式として中学・高1で習うのは (a+b)2 や (a+b)3 までですが、乗数が 4 や 5、あるいは 10 などの大きな数になったときに威力を発揮するのが「二項定理(にこうていり)」です。
今回は、二項定理の公式丸暗記を脱却するために、「なぜ展開式の係数に nCr(組み合わせ)が登場するのか」という仕組みから、手軽に係数を調べられる「パスカルの三角形」、そしてテスト頻出の「特定の項の係数を求める計算問題」まで分かりやすく解説します!
1. パスカルの三角形と展開式の係数
二項定理を学ぶ前に、まずは視覚的に分かりやすい「パスカルの三角形」を見てみましょう。
(a+b)n を展開したときの各項の係数(数字)だけを並べると、美しい三角形の規則性が現れます。
(a+b)⁰ = 1 1
(a+b)¹ = 1a + 1b 1 1
(a+b)² = 1a² + 2ab + 1b² 1 2 1
(a+b)³ = 1a³ + 3a²b + 3ab² + 1b³ 1 3 3 1
(a+b)⁴ = 1a⁴ + 4a³b + 6a²b² + ... 1 4 6 4 1
パスカルの三角形の作り方
- 頂点と両端はすべて「1」
- 内側の数字は「上の行の隣り合う2つの数字の和」 になる(例:1+2=3、3+3=6)
乗数 n が小さい(4乗や5乗程度)場合は、このパスカルの三角形を端にサッと書くだけで展開式の係数がすぐ分かります!
2. なぜ係数に nCr が出るの?(二項定理の仕組み)
乗数 n が 10乗や 20乗のように大きくなると、パスカルの三角形を何行も書くのは大変です。そこで登場するのが二項定理です。
なぜ組合せの記号 nCr が展開式に現れるのか、(a+b)3 を例に考えてみましょう。
(a+b)3=(a+b)(a+b)(a+b)
この展開は、3つの (a+b) の括弧それぞれから「a か b のどちらか1つを選んで掛け合わせる」作業と同じです。
例えば、展開して a2b の項ができる仕組みを考えてみましょう。
- 3つの括弧のうち、2つの括弧から a を選び、残り 1つの括弧から b を選ぶ必要があります。
- 「3つの括弧から b を選ぶ 1つの括弧を決める」選び方は 3C1=3通り あります。
だから、a2b の前につく係数は 3C1=3 になるのです!
3. 二項定理の公式と一般項
💡 【二項定理の公式】
n が正の整数のとき、
(a+b)n=nC0an+nC1an−1b+nC2an−2b2+⋯+nCran−rbr+⋯+nCnbn
公式全体は長く見えますが、構造は非常にシンプルです。
- a の次数: n からスタートして 1 ずつ減っていく( an,an−1,an−2,… )
- b の次数: 0 からスタートして 1 ずつ増えていく( b0,b1,b2,… )
- 係数: nC0,nC1,nC2,…,nCn と順番に変化する
【超重要】二項定理の「一般項」
二項定理の展開式の途中に現れる第 (r+1) 番目の項を一般項(いっぱんこう)と呼びます。
【一般項】nCran−rbr
テストで「~の項の係数を求めよ」と言われたら、まずこの一般項に数値を代入して立式するのが鉄則です!
4. 【実践例題】特定の項の係数を求める
定期テストや共通テストで必ず出題される決定的な解法パターンです。
【例題1】基本パターン
(2x−3)5 の展開式における x3 の項の係数を求めよ。
解答・解説
- 一般項を立てるa=2x、b=−3、n=5 として一般項を書きます。5Cr(2x)5−r(−3)r
- 「数」と「文字(x)」を分離整理する5Cr⋅25−r⋅(−3)r⋅x5−r
- x の指数(次数)に注目して r を決めるx3 の項を作りたいので、x の指数部が 3 になるようにします。5−r=3⟹r=2
- r=2 を係数部分に代入して計算する係数=5C2⋅25−2⋅(−3)2
- 5C2=2×15×4=10
- 23=8
- (−3)2=9
【答え】 720
【例題2】分数を含むパターン(少し応用)
(x2+x1)6 の展開式における定数項(x を含まない項)を求めよ。
解答・解説
- 一般項を立てる6Cr(x2)6−r(x1)r
- 指数法則を使って整理する
- (x2)6−r=x12−2r
- (x1)r=x−r(あるいは割り算として扱う)
- 「定数項(x0 の項)」になる r を求めるx の指数が 0 になれば良いので、12−3r=0⟹3r=12⟹r=4
- r=4 を代入して定数項を計算する定数項=6C4=6C2=2×16×5=15
【答え】 15
5. まとめ
- パスカルの三角形:手軽に小規模な展開式の係数を調べるのに最適!
- 二項定理の仕組み:展開式の各項は「どの括弧からどの文字を選ぶか」という組み合わせ nCr で決まる!
- 特定の項の係数を求める手順:
- 一般項 nCran−rbr を作る
- 数と文字を分離する
- 指定された次数になる r を求めて計算する!
これで、「場合の数」の主要な計算ツール(樹形図・順列 P・重複順列・同じものを含む順列・円順列・組み合わせ C・二項定理)がすべて揃いました!
次回からは、いよいよ「第40回:確率の基本と定義(同様に確からしい・事象)」へと進み、場合の数で学んだ知識を確率へ応用していきます!
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