【数Ⅰ:第8回】逆・裏・対偶と背理法〜命題の変形と証明の強力な武器〜

高校数学

こんにちは!高校数学の論理編、第8回のテーマは「逆・裏・対偶(たいぐう)」「背理法(はいりほう)」です。

数学の証明問題で「直接証明するのが難しい…」という場面に出くわしたことはありませんか?

そんなときに大活躍するのが、今回学ぶ「対偶を使った証明」「背理法」です。

概念を丸暗記するのではなく、「なぜそうなるのか」という仕組みからスッキリ理解していきましょう!

1. 逆・裏・対偶とは?

命題 $p \Longrightarrow q$($p$ ならば $q$)に対して、条件の順番を入れ替えたり、否定($\overline{p}$ や $\overline{q}$)にしたりしてできる新しい命題のことを、それぞれ逆・裏・対偶といいます。

まずはそれぞれの関係性を図で整理してみましょう。

  • 元の命題:$p \Longrightarrow q$ ($p$ ならば $q$)
  • 逆(ぎゃく):$q \Longrightarrow p$ ($q$ ならば $p$)※仮定と結論を入れ替える
  • 裏(うら):$\overline{p} \Longrightarrow \overline{q}$ ($p$ でないならば $q$ でない)※それぞれを否定する
  • 対偶(たいぐう):$\overline{q} \Longrightarrow \overline{p}$ ($q$ でないならば $p$ でない)※入れ替えて否定する

関係性の図解

Plaintext

       元の命題 : p ⇒ q  ──────【 逆 】──────>  逆 : q ⇒ p
           │                                      │
        【 裏 】                                【 裏 】
           │                                      │
           ▼                                      ▼
         裏 : p̄ ⇒ q̄  ──────【 逆 】──────>  対偶 : q̄ ⇒ p̄

   ※「元の命題」と「対偶」は【対偶の関係】(対角線)

2. 真偽の一致(超重要ポイント!)

ここが一番大切なポイントです。

元の命題の真偽と、対偶の真偽は必ず一致する!

  • 元の命題がなら、対偶も絶対に
  • 元の命題がなら、対偶も絶対に

※注意:「逆」や「裏」の真偽は、元の命題の真偽とは一致するとは限りません。

日常の例で考えてみよう

  • 元の命題:「東京に住んでいる $\Longrightarrow$ 日本に住んでいる」(
  • :「日本に住んでいる $\Longrightarrow$ 東京に住んでいる」(:大阪や福岡に住んでいるかもしれない)
  • :「東京に住んでいない $\Longrightarrow$ 日本に住んでいない」(:大阪に住んでいるかもしれない)
  • 対偶:「日本に住んでいない $\Longrightarrow$ 東京に住んでいない」(:日本にいないなら当然東京にもいない)

直感的にも、元の命題と対偶が同じことを言っているのが分かりますね!

3. 対偶を利用した証明

「元の命題と対偶の真偽が一致する」という性質を利用すると、直接証明するのが難しい命題を、対偶に変形して証明することができます。

例題

$n$ を整数とするとき、命題「$n^2$ が奇数ならば $n$ は奇数である」を証明せよ。

【考え方】

直接証明しようとすると、$n^2 = 2k + 1$ とおいて $n$ を求めることになり、ルート($\sqrt{2k+1}$)が出てきて大変です。

そこで、この命題の対偶を考えてみます。

  • 対偶:「$n$ が偶数(奇数でない)ならば、$n^2$ は偶数(奇数でない)である」

これなら簡単に計算できそうですね!

【証明】

元の命題の対偶は「$n$ が偶数ならば、$n^2$ は偶数である」である。

$n$ が偶数のとき、整数 $k$ を用いて $n = 2k$ と表せる。

このとき、

$$n^2 = (2k)^2 = 4k^2 = 2(2k^2)$$

$2k^2$ は整数なので、$n^2$ は偶数である。

よって対偶が真であるから、元の命題も真である。(証明終了)

4. 背理法(はいりほう)とは?

背理法とは、証明したい結論をあえて「成り立たない(否定)」と仮定し、そこから矛盾を導き出すことで、「仮定が間違っていた=元の結論が正しい」と証明する方法です。

背理法の進め方 3ステップ

  1. 結論を否定する(「〜でない」と仮定する)
  2. 論理的に計算・思考を進める
  3. 矛盾(あり得ないこと)を導く $\Longrightarrow$ したがって元の結論が正しい!

5. 背理法を使った定番問題:「$\sqrt{2}$ は無理数である」の証明

高校数学で最も有名な背理法の証明に挑戦してみましょう。

例題

$\sqrt{2}$ が無理数であることを証明せよ。ただし、「整数 $a, b$ について、$a^2$ が 2 の倍数ならば $a$ も 2 の倍数である」ことを用いてよい。

【証明】

$\sqrt{2}$ が無理数でない(すなわち有理数である)と仮定する。

このとき、互いに素な(これ以上約分できない)正の整数 $a, b$ を用いて、

$$\sqrt{2} = \frac{a}{b}$$

と表すことができる。

両辺を 2 乗して分母を払うと、

$$2 = \frac{a^2}{b^2} \implies a^2 = 2b^2 \quad \cdots ①$$

①より、$a^2$ は 2 の倍数である。

よって、$a$ も 2 の倍数となるので、整数 $k$ を用いて $a = 2k$ と表せる。

これを ① に代入すると、

$$(2k)^2 = 2b^2 \implies 4k^2 = 2b^2 \implies b^2 = 2k^2$$

これより、$b^2$ も 2 の倍数となり、$b$ も 2 の倍数となる。

すると、$a$ と $b$ はともに 2 の倍数となり、「$a, b$ は互いに素である」という前提に矛盾する。

したがって、最初の仮定「$\sqrt{2}$ が有理数である」は誤りであり、$\sqrt{2}$ は無理数である。(証明終了)

まとめ

今回のポイントを整理しましょう!

  1. 対偶の真偽は元の命題と必ず一致する(逆や裏は一致するとは限らない)
  2. 「〜でない」「少なくとも1つは〜」といった表現がある命題は、対偶証明や背理法を疑う!
  3. 背理法は「結論を否定」して「矛盾」を突きつける最強の証明法!

証明問題はパズルのようなものです。直接攻めるのが難しいときは、ぜひ「対偶」や「背理法」という裏ルートを試してみてくださいね!

次回は「条件と集合(ベン図を使った論理の整理)」について解説します。お楽しみに!

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