「場合分けが 4 パターンも 5 パターンもあって、計算がすごく大変……」
「問題文に『少なくとも〜』と書いてあったら、どうして引き算($1 – P$)を使うの?」
高校数学A「場合の数と確率」の第30回(第13回)は、確率の計算スピードと正確性を劇的にアップさせる超重要テーマ「余事象(よじしょう)の確率」を解説します!
「正面突破で計算するのが面倒なときは、逆(裏)から攻める」という考え方を完全にマスターしましょう!
1. 余事象(Complementary Event)とは?
ある事象 $A$ に対して、「$A$ が起こらない事象」のことを $A$ の余事象と呼び、記号 $\bar{A}$(Aバー) で表します。
全体集合を $U$ とすると、事象 $A$ とその余事象 $\bar{A}$ は互いに排反であり、2 つを合わせると必ず全事象 $U$ になります。
💡 【余事象の確率の公式】
事象 $A$ が起こる確率 $P(A)$ と、その余事象 $\bar{A}$ が起こる確率 $P(\bar{A})$ の間には次の関係が成り立ちます。
$$\mathbf{P(A) = 1 – P(\bar{A})}$$ $$\left(\text{または } P(\bar{A}) = 1 – P(A)\right)$$
なぜ「$1 – P(\bar{A})$」になるのか?
全事象の確率は必ず $1$(100%)です。
$A$ が起こる確率と $A$ が起こらない確率を足すと必ず $1$ になる($P(A) + P(\bar{A}) = 1$)ため、移項すると $P(A) = 1 – P(\bar{A})$ が成り立ちます。
2. 余事象を使うべき「発動合図(キーワード)」
次のような言葉が問題文にあれば、余事象を使うサインです!
| キーワード | 正面から解く場合 | 余事象(逆)で解く場合 |
|---|---|---|
| 「少なくとも 1 つは〜」 | 1個、2個、3個…と場合分けが多数発生 | 「すべて〜ない(0個)」 の 1 パターンのみ! |
| 「〜でない」「〜以外」 | 条件に合わないものを除外してカウント | 「ちょうど〜である」 確率を引く! |
※ 「場合分けの数が多すぎて大変そうだな」と感じたら、常に「逆(余事象)のパターンは何通りあるか?」を考える癖をつけましょう!
3. 【実践例題】余事象の確率の演習
【例題1】「少なくとも1つ」の基本問題
3 枚のコインを同時に投げるとき、少なくとも 1 枚は表が出る確率を求めよ。 解答・解説を表示する
1. 問題の事象と余事象を確認する
求めたい事象 $A$ は「少なくとも 1 枚は表が出る」です。
この否定(余事象 $\bar{A}$)は 「3 枚ともすべて裏が出る」 です。
2. 余事象の確率 $P(\bar{A})$ を求める
3 枚のコインの出方は全部で $2^3 = 8$ 通り。
3 枚とも裏が出る出方は (裏, 裏, 裏) の $1$ 通りだけです。
$$P(\bar{A}) = \frac{1}{8}$$
3. 公式 $P(A) = 1 – P(\bar{A})$ に代入する
$$P(A) = 1 – \frac{1}{8} = \frac{7}{8}$$
【答え】 $\mathbf{\frac{7}{8}}$
【例題2】くじ引きと余事象(応用)
10 本の中に 3 本のあたりくじが入っているくじがある。
この中から同時に 3 本引くとき、「少なくとも 1 本はあたりくじである」確率を求めよ。 解答・解説を表示する
1. 余事象を定義する
「少なくとも 1 本あたり」の余事象は 「3 本ともすべてはずれくじである」 です。
2. 全事象と余事象の場合の数を求める
あたりの本数は 3 本、はずれの本数は $10 – 3 = 7$ 本です。
- 全事象 $n(U)$: 10 本から 3 本引く組み合わせ $\rightarrow {}_{10}\text{C}_3 = \frac{10 \times 9 \times 8}{3 \times 2 \times 1} = 120$ 通り
- 余事象 $n(\bar{A})$: はずれ 7 本から 3 本引く組み合わせ $\rightarrow {}_7\text{C}_3 = \frac{7 \times 6 \times 5}{3 \times 2 \times 1} = 35$ 通り
3. 確率を計算する
余事象の確率 $P(\bar{A})$ は:
$$P(\bar{A}) = \frac{35}{120} = \frac{7}{24}$$
したがって、求める確率は:
$$P(A) = 1 – P(\bar{A}) = 1 – \frac{7}{24} = \frac{17}{24}$$
【答え】 $\mathbf{\frac{17}{24}}$
4. まとめ
- 余事象の基本: 事象 $A$ の逆「$A$ が起こらない」事象が $\bar{A}$。
- 余事象の公式:$P(A) = 1 – P(\bar{A})$ (全確率 1 から引き算!)
- 「少なくとも 1 つ〜」を見たら余事象! 「すべて〜ない(0個)」の確率を求めて 1 から引く。
余事象を使うことで、計算ミスを減らしスムーズに解く感覚が掴めました!
次回は「【数A:第31回】独立な試行の確率|『繰り返し・別々の試行』における確率の積の法則」を解説します!
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