複素数を「絶対値 $r$」と「偏角 $\theta$」のセット(極形式:$z = r(\cos\theta + i\sin\theta)$)で表せるようになると、複素数の計算は単なる代数計算から「図形の回転と拡大・縮小」のダイナミックな世界へと変貌します。
この記事では、複素数の積・商が持つ幾何学的な意味から、受験数学の超強力な武器である「ド・モアブルの定理」、そして図形的な回転移動のマスター法までわかりやすく解説します!
1. 複素数の積と商の「幾何学的意味」
2つの複素数 $z_1 = r_1(\cos\theta_1 + i\sin\theta_1)$ と $z_2 = r_2(\cos\theta_2 + i\sin\theta_2)$ をかけ合わせると、次のような驚くべき法則が成り立ちます。
① 積の公式
$$z_1 z_2 = r_1 r_2 \left\{ \cos(\theta_1 + \theta_2) + i\sin(\theta_1 + \theta_2) \right\}$$
- 絶対値同士は「かけ算」になり、偏角同士は「足し算」になる!
🎯 図形的な解釈(超重要!)
複素数 $z_1$ に $z_2$ をかけるという操作は、もとの点 $z_1$ を**「原点まわりに $\theta_2$ だけ回転させ、さらに原点からの距離を $r_2$ 倍に拡大(または縮小)する」**ことを意味しています。特に絶対値が $1$ の複素数をかけると、純粋な「回転移動」になります!
② 商の公式
$$\frac{z_1}{z_2} = \frac{r_1}{r_2} \left\{ \cos(\theta_1 – \theta_2) + i\sin(\theta_1 – \theta_2) \right\}$$
- 絶対値同士は「割り算」になり、偏角同士は「引き算」になります。
2. ド・モアブルの定理とは?
積の公式を何度も繰り返すことで導かれる、複素数平面の最も有名な定理が「ド・モアブルの定理」です。
公式
整数 $n$ に対して、次の式が成り立ちます。
$$(\cos\theta + i\sin\theta)^n = \cos n\theta + i\sin n\theta$$
💡 何がすごいのか?
「$(\cos\theta + i\sin\theta)$ の $n$ 乗」という厄介な累乗計算を、角を $n$ 倍するだけの掛け算に変換してしまう魔法の定理です。三角関数の $3$ 倍角・$4$ 倍角の公式を導出したり、方程式の解(1の $n$ 乗根)を求めたりするときに絶対不可欠となります。
3. 実戦演習:複素数を用いた回転移動
【問題】
点 $z = 1 + i$ を原点まわりに $\frac{\pi}{3}$ だけ回転させた点 $w$ を表す複素数を求めよ。
極形式を使った解説・解答
- もとの点 $z = 1 + i$ を極形式に変形する
- 絶対値 $r = \sqrt{1^2 + 1^2} = \sqrt{2}$
- 偏角 $\theta = \frac{\pi}{4}$したがって、 $z = \sqrt{2}\left(\cos\frac{\pi}{4} + i\sin\frac{\pi}{4}\right)$ と表せます。
- 「角を $\frac{\pi}{3}$ だけ回転させる」操作を行う回転させるということは、偏角に $\frac{\pi}{3}$ を足し合わせればよいため、$$w = \sqrt{2} \left\{ \cos\left(\frac{\pi}{4} + \frac{\pi}{3}\right) + i\sin\left(\frac{\pi}{4} + \frac{\pi}{3}\right) \right\}$$$$\frac{\pi}{4} + \frac{\pi}{3} = \frac{7}{12}\pi$$となるため、極形式のまま $w = \sqrt{2}\left(\cos\frac{7}{12}\pi + i\sin\frac{7}{12}\pi\right)$ として求めることができます。
4. まとめ:ド・モアブルと回転移動の鉄則
- 複素数の「かけ算」は、幾何学的には「回転 + 拡大・縮小」を表す。
- ド・モアブルの定理 $(\cos\theta + i\sin\theta)^n = \cos n\theta + i\sin n\theta$ で累乗計算をマスターする。
- 図形の回転移動問題では、回転角を偏角に足し引きするアプローチが最もスムーズ。
ここがクリアできたら、次は複素数平面における図形の方程式(垂直二等分線や円の方程式、アポロニウスの円など)へと進みましょう!
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