微分法の単元を締めくくる最後のテーマは、物理現象への応用である「速度・加速度」と、複雑な計算を扱いやすくする「一次近似式」です。
数学Ⅱでも直線上の運動における速度・加速度を学びましたが、数学Ⅲでは平面上の運動(ベクトル表現)や、導関数の定義を利用した数値の近似計算へとスケールアップします。
この記事では、速度・加速度の計算手順から近似式の使い方までわかりやすく解説します!
1. 平面上の運動における速度と加速度(ベクトル表現)
座標平面上を運動する点 $P(x, y)$ の位置が、時刻 $t$ の関数として $x = f(t), \ y = g(t)$ と表されているとき、速度や加速度は次のように位置を $t$ で微分することで求められます。
① 速度ベクトルと「速さ」
- 速度ベクトル $\vec{v}$:$$\vec{v} = \left( \frac{dx}{dt}, \frac{dy}{dt} \right) = (f'(t), g'(t))$$
- 速さ(速度の大きさ $\vert{}\vec{v}\vert{}$):$$\vert{}\vec{v}\vert{} = \sqrt{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2 + \left(\frac{dy}{dt}\right)^2}$$
② 加速度ベクトルと「加速度の大きさ」
- 加速度ベクトル $\vec{a}$:$$\vec{a} = \left( \frac{d^2x}{dt^2}, \frac{d^2y}{dt^2} \right) = (f”(t), g”(t))$$
- 加速度の大きさ $\vert{}\vec{a}\vert{}$:$$\vert{}\vec{a}\vert{} = \sqrt{\left(\frac{d^2x}{dt^2}\right)^2 + \left(\frac{d^2y}{dt^2}\right)^2}$$
2. 一次近似式(接線による近似計算)
$h$ が $0$ に十分近いとき($h \approx 0$)、曲線 $y = f(x)$ の $x = a$ 付近の値を、$x = a$ における接線の方程式で代用して計算する方法を「一次近似」と呼びます。
近似の基本公式
$$f(a + h) \approx f(a) + f'(a)h \quad (\vert{}h\vert{} \text{ が十分小さいとき})$$
特に $a = 0$ のときの公式は非常によく使われます。
$$f(h) \approx f(0) + f'(0)h$$
代表的な近似公式まとめ
- $(1 + h)^n \approx 1 + nh$
- $\sin h \approx h$
- $e^h \approx 1 + h$
- $\ln(1 + h) \approx h$
3. 実戦演習:一次近似式を使った数値計算
【問題】
一次近似式を用いて、$\sqrt{1.02}$ の近似値を求めよ。
【解説・解答】
- 関数 $f(x)$ を設定する$f(x) = \sqrt{x} = x^{\frac{1}{2}}$ とおきます。
- 微分する$$f'(x) = \frac{1}{2\sqrt{x}}$$
- $a = 1, h = 0.02$ として近似公式 $f(1 + h) \approx f(1) + f'(1)h$ を適用する
- $f(1) = \sqrt{1} = 1$
- $f'(1) = \frac{1}{2\sqrt{1}} = 0.5$
- 代入して計算する$$\sqrt{1.02} = f(1 + 0.02) \approx 1 + 0.5 \times 0.02 = 1 + 0.01 = \mathbf{1.01}$$
4. まとめ:第2章(微分法)の総括
- 速度・加速度は「位置の成分ごとの $t$ による微分」。速さはベクトルの大きさ(三平方の定理)で求める。
- 一次近似式 $f(a+h) \approx f(a) + f'(a)h$ は、接線を使って複雑な数値をカンタンに求めるテクニック。
- これで「第2章:微分法」の全単元(定義、各種計算、接線、増減、極値、凹凸、グラフ、応用)がすべて完了!
微分法の知識をフル活用することで、複雑なグラフの全貌を解明し、物理的な変化率まで自在に扱えるようになりました。
次はいよいよ、微分の逆演算から始まり、面積・体積・曲線の長さを切り拓く「第3章:積分法(Integration)」へと進みましょう!
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